リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「南先輩に褒めてほしくて、いつも寝る前に花の図鑑読んでますから」

「おお。さすが読書家だ」

先輩の手がふわりと頭に乗った。


……先輩に、触れられた?

こんなことがあって良いのか?バチが当たりやしないか?

色々な思考が頭を駆け巡る。


「優秀で賢い後輩だ」

どきっどきっ、と心臓が音を立てる。

はぁ、なんだか胸が苦しいなぁ。


「……南先輩、ずるいですよ。こういうことするの」

「……えっ?」

汗をかいてるはずなのに、先輩のポロシャツから香る柔軟剤の匂いが鼻をかすめた。

先輩の匂い。いい匂い。

初めて触れられた手の感触。大きい手。


「……無意識なら、仕方ないですけど」

白いシャツに向日葵に、南先輩の笑顔。
これ以上のものなんて想像できない。

急に体温が上がった気がしたのは、夏の太陽のせいじゃない、よね?

——確実に、南先輩のせいだ。
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