リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「……ねぇ、みなみ先輩」

「ん?どうした?具合でも悪い?」

先輩は頭に乗せていた手を下ろし、俯く私を心配そうに覗き込んだ。


「……違くて。私、南先輩のことが……」

「ん?」

あぁいけない。


「……南先輩は、私の憧れです!!」

先輩は、ふわっと笑った。

危うく口を滑らせるところだった。

「いきなり何言い出すかと思ったよ。そんなふうに思ってくれてたんだ、ありがとう。俺も可愛い後輩ができて嬉しいよ」


“好き”だなんて、やっぱり言えない。言わない方がいい。

南先輩は気づいてるだろうけど、心で想うのと口に出すのはやっぱり違う。

先輩も困るし嫌がるだろう。


気持ちを伝えて先輩に会えなくなるぐらいなら、このままでいい。

でも私はきっと、この関係じゃ我慢できなくなってきているんだ。恋に欲は付きものだ。


南先輩に出会ったばかりの頃の、まだ“謙虚”だった頃の自分は、もういなくなってしまった。

「向日葵って黄色をイメージしがちだけど、赤やオレンジ、白の向日葵もあるんだよ。それから栄養価も高いんだ」

そんなことを思っていたら、先輩の豆知識も、いつもみたいに笑って聞けなくなった。


夏休みも先輩と会えるのは週に一度だけ。だから回数にしたらたったの六回。

そう考えると、先輩との時間はすごく貴重なものに思える。
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