リナリアの咲く季節には、キミが隣に。
「晴人!」

後ろから聞こえてきた声。振り向かなくても分かる。実花さんだ。


「実花」

先輩は振り返って、驚いた表情で名前を呼んだ。

「晴人、この前は来てくれてありがとね、雨の中。うちの玄関に傘忘れてたよ。だから届けにきた」

実花さんの手には、私が先輩に貸した傘が握られていた。

あの日、南先輩と実花さんは会っていた。

わかってはいたけれど、何かの間違いだったらいい。そんなふうに思う自分もいたのは事実で。
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