春夏秋冬《きせつ》の短編集
「…秋の風…」
私は思わず空を見上げた。
よく晴れた青い秋の空に、ゆっくりと赤みが指す。
もう夕方だ。
はらはらと赤や黄色の落ち葉が舞ってはまた落ちて、 乾いた風がその葉を軽く巻き上げて私たちを取り巻く。
フワッ…
体がなんだかぐらついた。
気付くと私の足は体ごとゆっくりと地面を離れて行っていた。
「!!」
そばにいるその子にも触れられないため、何かに掴まる事もできない。
「な、何!?…あなたがしたの…?」
女の子はゆっくりと浮き上がりながら楽しげに笑っている。
…やっぱりこの子の力なんだ…
この子、死神か天使だったんだ…私まだ、死にたくはなかったな…
私は呆然としたまま宙に浮き、女の子を見つめた。
女の子が前を指差したので、私は木が足元につくほどの高さに浮いたまま、そちらを見る。
見ると空は赤にゆっくり変わっていて、赤の後ろはもう暗く、星が出始めていた。
「キレイ…」
こんなにゆっくりと空を見たのはいつぶりだろう?
夏も、ぼんやりはしていてもちゃんと空を見ることは無かったかもしれない。
女の子は宙に浮いたまま楽しそうに風に乗り、クルクルと踊るように回った。
…もしかして、この子はこれを私と一緒に見たくて…
私は状況に流されやすいのかもしれない。
こんな不思議なことが起きているのに驚かないなんて。
だからいつも、気乗りもしないのに多少無理して過ごして、気付くとあんなふうに何もしたくなくなるのかも…
「…ね、記念写真撮らない?見るだけじゃなくて、撮っておきたくなっちゃった。携帯で撮るから、こっち寄って?」
私が手招きをする。
その子は笑ってそばによってきた。
人間ではないこの子を上手く撮れるかなんて分からない。それでも、この瞬間を、この気持ちを忘れずにいたいから。
「いくよ〜…」
すぐに撮った写真を確認しようとしたけれど、女の子は私と一緒に地面に降りていく。
そして…
『…またあそぼ…!』
秋の風に乗って、無邪気な女の子の声が聞こえた。
「…また、きっとだよ…!」
もう姿の見えない女の子にそう返すと、私はさっき見られなかった撮ったばかりの写真をさっそく確認する。
「あ……」
小さくてキレイな一枚の紅葉が、笑顔の私のそばに写っている。
秋の風を呼ぶ、赤い着物の女の子…きっとあの子は…
「…今度はもっと上手く撮ってあげる…!私、カメラ練習するから…だからまた秋に…!」
周りに流されてばかりの私が、初めて上手くなりたいと思ったものができた。
ひっそりでもいい、いつか自分が満足出来た、秋を写した写真集なんかが出せたら素敵かもしれない。
…そうしたらいつかあの子に見せよう。
そんな事を考えながら家に帰る私の足取りは、とても軽くなっていた。
私は思わず空を見上げた。
よく晴れた青い秋の空に、ゆっくりと赤みが指す。
もう夕方だ。
はらはらと赤や黄色の落ち葉が舞ってはまた落ちて、 乾いた風がその葉を軽く巻き上げて私たちを取り巻く。
フワッ…
体がなんだかぐらついた。
気付くと私の足は体ごとゆっくりと地面を離れて行っていた。
「!!」
そばにいるその子にも触れられないため、何かに掴まる事もできない。
「な、何!?…あなたがしたの…?」
女の子はゆっくりと浮き上がりながら楽しげに笑っている。
…やっぱりこの子の力なんだ…
この子、死神か天使だったんだ…私まだ、死にたくはなかったな…
私は呆然としたまま宙に浮き、女の子を見つめた。
女の子が前を指差したので、私は木が足元につくほどの高さに浮いたまま、そちらを見る。
見ると空は赤にゆっくり変わっていて、赤の後ろはもう暗く、星が出始めていた。
「キレイ…」
こんなにゆっくりと空を見たのはいつぶりだろう?
夏も、ぼんやりはしていてもちゃんと空を見ることは無かったかもしれない。
女の子は宙に浮いたまま楽しそうに風に乗り、クルクルと踊るように回った。
…もしかして、この子はこれを私と一緒に見たくて…
私は状況に流されやすいのかもしれない。
こんな不思議なことが起きているのに驚かないなんて。
だからいつも、気乗りもしないのに多少無理して過ごして、気付くとあんなふうに何もしたくなくなるのかも…
「…ね、記念写真撮らない?見るだけじゃなくて、撮っておきたくなっちゃった。携帯で撮るから、こっち寄って?」
私が手招きをする。
その子は笑ってそばによってきた。
人間ではないこの子を上手く撮れるかなんて分からない。それでも、この瞬間を、この気持ちを忘れずにいたいから。
「いくよ〜…」
すぐに撮った写真を確認しようとしたけれど、女の子は私と一緒に地面に降りていく。
そして…
『…またあそぼ…!』
秋の風に乗って、無邪気な女の子の声が聞こえた。
「…また、きっとだよ…!」
もう姿の見えない女の子にそう返すと、私はさっき見られなかった撮ったばかりの写真をさっそく確認する。
「あ……」
小さくてキレイな一枚の紅葉が、笑顔の私のそばに写っている。
秋の風を呼ぶ、赤い着物の女の子…きっとあの子は…
「…今度はもっと上手く撮ってあげる…!私、カメラ練習するから…だからまた秋に…!」
周りに流されてばかりの私が、初めて上手くなりたいと思ったものができた。
ひっそりでもいい、いつか自分が満足出来た、秋を写した写真集なんかが出せたら素敵かもしれない。
…そうしたらいつかあの子に見せよう。
そんな事を考えながら家に帰る私の足取りは、とても軽くなっていた。