春夏秋冬《きせつ》の短編集
まだぼんやりしたまま家の近くの公園までやってきた私は、そこでやっと朝のことを思い出した。
(そういえば朝の…)
白い鎧の男の人。
普通鎧を着た幽霊なら、『落武者』みたいに戦いに破れた無念のようなもので彷徨っていそうなものだ。
しかし朝見たのはそんな雰囲気ではなかった。あんなところで寒い中、演劇やなんかの衣装を着るはずもない。
恐る恐る奥を覗くと、誰もいない冬の薄暗い公園にポツンと、朝に見たその人が立っている。
興味に駆られた私は数歩、その人に近付いた。
(男の人…本当に、日本風の白い鎧だ…!それに、透けてる…)
加えて、薄暗いのに見えるということは、その男の人が浮かび上がって見えているということ。
絶対に人間じゃない。
そう思ったその時、パッ、と、その人は槍を取り出し、踊るように振り回した。
時代劇でしか見ないような光景に、私は思わず見入る。
北風が巻き起こり、私は寒さに手袋を忘れた手を強く握りしめる。
『進め…信じるもののために…』
男の人が槍を振り回したまま、そう呟くように言った。
真っ直ぐに前を見るその顔が、とても勇ましく格好良く私には見えた。
(そうだ、何かと戦うためにこの人は鎧なんだ…)
何かを決意した様子の彼。私には悪い人には見えなかった。
私はさらに数歩、その人に向かって歩いていった。
(そういえば朝の…)
白い鎧の男の人。
普通鎧を着た幽霊なら、『落武者』みたいに戦いに破れた無念のようなもので彷徨っていそうなものだ。
しかし朝見たのはそんな雰囲気ではなかった。あんなところで寒い中、演劇やなんかの衣装を着るはずもない。
恐る恐る奥を覗くと、誰もいない冬の薄暗い公園にポツンと、朝に見たその人が立っている。
興味に駆られた私は数歩、その人に近付いた。
(男の人…本当に、日本風の白い鎧だ…!それに、透けてる…)
加えて、薄暗いのに見えるということは、その男の人が浮かび上がって見えているということ。
絶対に人間じゃない。
そう思ったその時、パッ、と、その人は槍を取り出し、踊るように振り回した。
時代劇でしか見ないような光景に、私は思わず見入る。
北風が巻き起こり、私は寒さに手袋を忘れた手を強く握りしめる。
『進め…信じるもののために…』
男の人が槍を振り回したまま、そう呟くように言った。
真っ直ぐに前を見るその顔が、とても勇ましく格好良く私には見えた。
(そうだ、何かと戦うためにこの人は鎧なんだ…)
何かを決意した様子の彼。私には悪い人には見えなかった。
私はさらに数歩、その人に向かって歩いていった。