SWEETHOLIC《2》~社長と秘書の恋の始まりは社長室から~(完)
「どうぞ…コーヒーです。社長」

「あ…早波さん…」

彼は声を上ずらせ、私を呼ぶ。とても動揺していた。
「あの…どうしました?社長」

「先ほど…会長から内線を貰った。早波さん…『藤堂コーポレーション』を退職するって本当か?」

彼は信じられないような表情で私に問いかけた。
声も震えていた。

社長の黒い瞳が事実を確かめようと私をジッと見ていた。

「はい…お世話になりました…社長」

「・・・いきなりどうして!!?」
彼の声に熱が篭る。

「どうしてって…人生のリセットをしようと考えまして」

沈着冷静でクールな社長の額に焦りの汗が滲む。

大地震が起きても、冷静でいられる鋼の神経の持ち主かと思っていたが、違った。

私の退職を訊き、これほどまでに動揺するとは思いもよらなかった。
驚くばかりで、私の方が冷静になってしまった。
< 11 / 160 >

この作品をシェア

pagetop