俺の好きにさせてください、お嬢様。
気づけば食堂にはわたし含めぽつぽつと数人のお嬢様のみとなってしまった。
2学期~3学期はとくにお嬢様にとっても御曹司にとっても、確かに忙しい時期。
お見合いだったり婚約だったり、そーいう話がたくさん上がるとは聞いたことがあるけど…。
「ハヤセ、ハヤセ、」
「…どうかされましたか?エマお嬢様」
黒いタキシードの袖をくいっと引いて、じっと見上げてみる。
バチッと合わさった整った顔。
少ししゃがんでくれると、もっとわたしはハヤセを見つめた。
「だ、だれもいないっ。それに誰も見てないよハヤセっ」
「そうですね」
ほら、残っていた生徒も食堂から出て行くところだ。
だから2人きり。
ハヤセ、ふたりきりだよ?
「ハヤセ、…ハヤセ、」
「…ちゃんと言葉で言わなければ伝わらないと俺は何度も言っているはずでしょう?」
「…うん。……ぎゅって、したい、」
こうして特別な関係になってから甘えるのは上手になったかもしれないけど、言葉で伝えることが苦手な日も増えた。
恥ずかしくてドキドキして、うまく伝えることができない。
そんなわたしに目尻を下げたハヤセは腕を伸ばしてくる。