俺の好きにさせてください、お嬢様。
「ハヤセはお姉ちゃんの許嫁だったから……、わたしの執事になったなんて言ったら…ハヤセに泥塗っちゃう、」
きっとお父さんはそんなの認めない。
もしかするとハヤセの名前とランクすら、わたしのせいで汚してしまうかもしれない。
こんな娘を選んだのか君は、なんて。
あの男は、そーいう人なの。
「俺は旦那様にエマお嬢様の執事として認めてもらいたいわけではありません。
たとえ認められなくても、俺はずっとあなたの隣にいますから」
戸惑うわたしの傍に立つと、そっと頬を撫でてくれる。
揺れる瞳を見つけたハヤセは柔らかく微笑んで、そっとおでこにキスをひとつ落とした。
「ただ、俺のお嬢様はこんなにも可愛くて素晴らしい方だと伝えたいのです」
「……うん。…ハヤセ、ハヤセっ、」
「なんでしょう?」
「ぎゅってして、…ちょっと苦しくていいよっ」
くすっと笑われてしまった。
わたしの弱いところを誰よりも知っている執事はあなただけ。
「えいえいおーだよハヤセっ!」
「はい。…かわいい、」
ぎゅうっと、苦しいくらいに抱きしめてくれた───。