俺の好きにさせてください、お嬢様。




そんな律儀にしなくてもいいのに……。

ハヤセは丁寧すぎる。
少しはサボったっていいと思う。


ハヤセが思ってるよりわたしって本当に柊家から見放されてるような存在だよ?

まだお姉ちゃんや使用人であるタカさんが優しいから、娘として認められてるレベルで。



「君は勿体ないことをしたな。早乙女財閥との縁談も破棄にし、聖スタリーナ女学院では迷惑ばかりかけてる娘を選ぶとは」


「ええ、ですからエマお嬢様を俺が貰ってよろしいでしょうか」


「……」



驚いてる。

そりゃそうだ、わたしだって思わずハヤセに「へっ?」と反応してしまった。



「申し訳ございません。“貰う”という言い方は俺の大切なお嬢様に対して無礼極まりない失言でした。
俺の好きにさせてくださいと、伝えたかったのです」


「───駄目だ。」


「なぜですか?」



お父さんの珍しい反応に、ハヤセは少し声を落としながらすぐに問いかけた。


わたしもびっくりだ……。

ハヤセの言葉もそうだけど、なによりお父さんがわたしを引き留めたのだから。


いつも放ってばかりだったのに、こーいうときに限って娘を心配してくれているの……?



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