俺の好きにさせてください、お嬢様。




「ですが高校を卒業したら、あなたのお望みどおりエマお嬢様には苗字を変えさせます。───“早瀬”に」


「……え…、」



反応してしまったのはわたし。

その意味を深く考える暇もなく、ハヤセはわたしに身体を向けた。



「行きましょうエマお嬢様。旦那様もお忙しいところ失礼いたしました」



そのままわたしの手を取って、大きなドアの前へ向かってゆく。

───と、その寸前で足を止めた。



「最後にひとつ。もう俺はあなたに用はありませんので、これだけは言わせてください」



あ……、これ知ってる…。

このぶわわっと変わる空気をエマは十分に知っているのだ。



「エマお嬢様もアリサ様も、てめえの手駒じゃねえんだよ。エマお嬢様は俺が貰う。
アリサ様には誰かさんがいるだろうが、それだってお前なんかに貢献するためじゃねえからな。

勘違いすんなよ傲慢(ごうまん)ジジイ」



ほら出たーーーーっ!!

わかってた!!
もう分かってたよわたしっ!!


それに結局“貰う”って言っちゃってるしっ!!

さっき訂正した意味ないじゃんっ!!



「行くぞエマ、」


「はっ、はい…!」



こ、怖すぎる……っ!!

もしかすると今までで最大の俺様ハヤセだったかもしれない…。



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