俺の好きにさせてください、お嬢様。
あなたは今までもわたしを馬鹿にしたことなんか1回もなくて。
いつも信じてくれていて、もし無理なら一緒に頑張りましょうって言ってくれるような人だから。
「…泣いてもいいんですよ?エマお嬢様」
「ううん、だって悲しくないもんっ」
小さな子供をあやすように見つめてくるハヤセ。
確かにお父さんの言葉はわたしの心に刺さるようなキツいものだったかもしれない。
でも本当に悲しくないの。
平気なの、これは強がりでも意地っ張りでもないんだよ。
「わたし今日すっごく嬉しかったからっ!泣くなら嬉しい涙だねっ」
わたしがそう言うと、ハヤセは余計に泣いてしまいそうな顔になっちゃった。
「ありがとうハヤセ。ハヤセがいてくれて、よかった!」
もしあの場所に1人だったら、たぶんわたしは駄目だった。
簡単に崩れてしまっていた。
けど、たったひとりあなたが隣にいるだけで何よりも強い盾と剣だから。
怒ってくれてありがとう、あんなにもわたしの代わりに言葉を伝えてくれてありがとう。
「…エマお嬢様。俺が先ほどあの男に伝えた言葉は、気休めや慰めの冗談なんかではありません」
「え…?」
「俺は本気です。本当は…今すぐにでも拐ってしまいたい」