俺の好きにさせてください、お嬢様。
なんて優しい顔をしているんだろう。
たとえ世の中の全員がわたしの敵になって、みんながわたしを馬鹿と見て、破壊神と見て。
呆れた冷たい目を送ったとしても、この人だけは隣にいてくれるって。
味方でいてくれるって、えいえいおーで一緒に立ち向かってくれるって。
そう思わせてくれるには十分な目だ。
「ねぇハヤセ…っ、」
「…なんでしょう?」
「け、結婚したら……“早瀬 エマ”になるねっ。えへへ、似合う?」
「───…びっくりするくらい似合う」
イタリアはどんな国だろう?
どんな人がいるんだろう?
卒業したらわたしはイタリアで何をするのかな?
あ、果物屋さんとかで働きたいな。
ハヤセが丁寧にフルーツをカットしてくれる姿を毎日のように見てるから。
いつかわたしも、破壊神にも、そうやって誰かに切り分けてあげることができるようになりたいなぁ。
「ハヤセ、イタリアにもクローバーはある?」
「もちろんです。エマお嬢様がいる場所なら、どこだとしても絶対にありますから」
「うんっ」
じゃあどこだとしても幸せはあるってことだね。
幸福はたくさんの場所に落ちているってこと。
つうーーと、気づけばわたしの頬には涙が流れていた。
「エマお嬢様、エマお嬢様、」
「…悲しくないよ、だってわたしにはハヤセがいるから…」
お姉ちゃんもいる、早乙女だっている。
理沙だって碇だって。
だからお父さんにあんなこと言われたって頑張れる。