俺の好きにさせてください、お嬢様。
「うぅ…っ、ぅぅ…、」
「…愛しています、エマお嬢様」
たぶん、今日のためだ。
わたしが今まで色んな人から蔑まれた目を送られてきたのも、馬鹿にされてきたのも。
こうしてハヤセに守ってもらうため。
「イタリアの街はすごく綺麗ですよ。日本のような和とは少し違うかもしれませんが、イメージではカラフルな場所です」
カラフル…?
花とかもいっぱいあるのかな…?
だったらクローバーもたくさんあるね。
「ピザやパスタも美味しい。職人が目の前で大きな生地を回してくれるんです。
俺と一緒に作ってもいいですね、エマお嬢様」
お父さんの言葉は、“お前なんかいらなかった”と意味を持っていた。
わたしが産まれたことを喜ぶどころか、むしろ逆。
だから彼は今、それ以上の愛情をわたしにくれようとしている。
「イタリア男性は女好きなところがあるので少々厄介ですが、必ず俺が守ります」
大丈夫だよハヤセ。
こんなお嬢様を好きになるのはあなたくらいだ。
扱えるのだってハヤセだけ。
「…エマお嬢様、」
涙の先で甘く名前を呼んでくれる。
いつもみたいに笑いたいのに、上手くできない…。
それでもハヤセはわたしを見つめてくれる。わたしだけを見てくれる。