俺の好きにさせてください、お嬢様。
番外編
①
それは高校最後の冬休み、クリスマス前のことだった。
『実はエマお嬢様が食事を何ひとつ取らないんです。申し訳ないのですがアリサ様、来てはいただけませんか?』
真冬くんから入った1本の電話。
あんなにも元気で賑やかで勉強より3度のご飯なエマが食事を取らない、だなんて。
御子柴さんにはお留守番を頼んで、すぐにわたしはエマの寮へ向かった。
「エマ、大丈夫?ほらご飯いっぱいあるわ。あなたが好きなものよ?」
「うん、いらない…」
「……真冬くん、お粥を作ってもらってもいいかしら」
「わかりました」と、すぐにキッチンへ立ったエマの専属執事。
これはただ事じゃない…。
なにがあったのか理由すらエマは話せない状態だし、2日は飲み物やゼリーしか口にしてないという。
そんなのはエマからしたら緊急事態だ。
「エマ、お粥よ?よく風邪のときはタカさんに作ってもらっていたでしょう?ほら食べて」
「うん、いらない…」
一点を見つめて同じ返事。
口を小さく開いて答えるだけだし、無理やりに開けさせて食べさせるわけにもいかない。