俺の好きにさせてください、お嬢様。
熱はないし、咳もしてない。
だから風邪ではないのは確かなはずなのに、顔はどことなく赤くて。
何より真冬くんがエマの傍を通ると、ぼわっと赤くなって。
通りすぎると、スッと戻る。
「…真冬くん、エマに何かした?」
「……何か、と言いますと」
「あなた達はお付き合いをしてるのよね?健全なお付き合い、してる?」
「……」
本当は私だってこういう話には慣れてない。
燐とのキスだって今だに呼吸を止めてしまうレベルだ。
それでもここは姉としてしっかりしなくちゃ。妹がこんな状況なんだから尚更。
「…俺が近づくと食事どころではないのでアリサ様に頼んだのです」
「それは知ってるわ。けれど根本的な問題があるでしょう?エマに、なにか、した?」
おかしいでしょう。
あんなにもハヤセハヤセと毎日言っているような子が、今日は一言も言わないんだから。
この子が想像できない以上のことをされなければ、こんなふうにはならないはず。
今も空を眺めて鳥まで数えちゃってるもの。
あのエマがこんなに静かなのよ?
「───で、俺が呼ばれたってわけね」