俺の好きにさせてください、お嬢様。
まるで私が佐野様との婚約を乗り気じゃない、みたいな言い方をしてくる。
やっぱり早瀬さんに染まってるんじゃないの碇。
そんなこと、今まで1回も言ったことなかったのに。
「私にとって、あなたが笑顔でいることが一番なんです…!」
「碇、生意気よ」
「すっ、すみません…!ですが、これだけは言わせてください…!!」
どうやら引く気はないみたいで。
ギロッと強めに睨んだとしても、一瞬怯えるけれど立ち向かってくる。
そんな碇をもう少し見たいと思った。
「私は…佐野様と結婚した先に、理沙お嬢様の心からの笑顔があるとは思えません…!!」
「───…」
それは図星を突かれてしまったような気持ちだった。
泳げなくてどんくさくて、いざというときに情けない専属執事。
私に反論したことなんか無かった。
それでも誰にも見られたことのない本当のところを、碇は突いてきた。
「執事としてではなく普通の男としても言っていいならば…っ、や、やめろと言いたいです…!!」
「…碇、」
「すっ、すみません理沙お嬢様…!私はなんて無礼な真似を…っ!!」