俺の好きにさせてください、お嬢様。
「私は、ずっと理沙お嬢様のお傍にいます。この先なにがあっても…います」
「…うん」
「それが私の……“俺”の、幸せですから」
これでカナヅチじゃなかったら良かったんだけど……なんて。
くすっとこぼれてしまうと、碇は腕の力をぎゅっと込めた。
それは執事として?それとも男として?
俺の幸せって……後者じゃないの、碇。
そんな言葉は、不器用な腕の中で消してもらうことにした。
「じゃあもし私が佐野様と上手くいかなくて破談になって、そのあと嫁ぎ先が見つからなかったら…、
責任取ってあなたが貰ってくれる?」
「……え…?」
「ふふっ、冗談に決まってるじゃない。明日までの課題を片付けなくちゃ、離して碇」
やっぱり執事とお嬢様なんて普通はありえないのよ。
だってそうなると私の場合は碇なのよ?
ないない、私は少し強引で男らしい人が好きなの。
そんなことを思っていると、お嬢様の命令に逆らうように抱きしめる力を強めた執事。
「───…わかりました。でしたら早く破談してください、理沙お嬢様」
「………は?」
「なので俺は、これからはそれを望みながらあなたの隣にいます」
なにを言ってるの、馬鹿じゃないの。
そんな言葉すら、らしくない強引な腕の中に溶けてしまった───。
番外編② fin.