俺の好きにさせてください、お嬢様。
「…はい、これ」
「え?俺に?」
「せめて何か当てたほうがいいわ」
きっと冷やされたタオルなんだろう。
ずっと冷凍されていたのか、微かに冷気がふわっと煙みたいに上がっていて。
それをお姉ちゃんはわざわざ早乙女のために席を立ち上がって店員さんに貰いに行ったのだ。
「……これ、なんか特殊な毒とか盛られてない?」
「っ!そんなわけないでしょ!!」
「じゃあ俺を心配してくれたってこと?」
「っ…、」
バチン───!!
本日2回目となる容赦ないビンタは、再び早乙女 燐の頬へと。
「………なんでだよ」
「人の親切なんだと思ってるのよ…!!」
「…お前は俺のこと大嫌いなんだからさ、そりゃ誰だって思うだろ」
「い、いいから当ててなさいよっ!」
いや待って。
お姉ちゃんってね、昔からちょっとだけ素直じゃないところがあるの。
妹のわたしがいちばん知ってるんだけど…少し照れたりすると認めないところがあって。
今だってお姉ちゃん、照れてるんだよこれ。早乙女、早く気づかないかなぁ…。