俺の好きにさせてください、お嬢様。
アリサside




「アリサは俺が送ってくけど、エマたちは?乗る?」


「ううんっ!わたしたちは寄るところがあるから!」


「そ?じゃーね」


「またねーーっ!」



お店に入る前に転んだ妹の怪我は少し心配だったけど、真冬くんがいるから平気ね───と。

私はホッとしつつ見送った。



「はい、どうぞ」


「…ありがとう」


「ありがとうよりごめんねが欲しいよ俺は」


「言うわけないわ」



助手席のドアをスムーズに開けてくれる燐は、私の皮肉を込めた返事に軽く笑って閉めた。


この男と2人で話す時間は、いつの間にか“嫌い”では無くなった。

それもすべてエマのおかげで、だから婚約続行というわけでもないけれど。


良好な関係さえ築いていればいい───なんて両家との約束の上でも、わざわざ休日にプライベートで会っている今日。



「あなたは今もエマのことが好きなの?」



静かな車内で淡々と聞いてみた。


この男がエマに本気で惚れていたのは知っている。

今日だって子供のようにはしゃぐエマを、優しい顔をして見つめていたのだって知っている。



< 38 / 140 >

この作品をシェア

pagetop