俺の好きにさせてください、お嬢様。
「俺ね、ほんとに誰かを好きになる気持ちは1度知ってるから分かるんだよ」
「…知ったふうなこと言わないでって言ったじゃない」
「いや知ってんだもん俺。───アリサ、お前は俺のことが好きなんだよ」
「っ…、」
バッ!と、反射的に上げた右手。
そのままいつもの流れなら、目の前の男の頬を容赦なくひっ叩く。
けれどパシッと余裕そうに取られてしまった。
「っ、」
「お前は俺のことが好きになっちゃったんだよ、アリサ」
「じ、自意識過剰すぎるわよ…っ、」
「なら…俺は今でもエマが好き、今日だってエマに会いたくて行った、そう言ったらどう?」
「……いいと、思うわ、」
視界が涙でいっぱいだった。
もう燐の顔すら映し出せないくらいに、ポロポロと落ちてはぎゅっと目をつむった。
それなのに私の手を離すどころか力を加えてくる燐。
「こんな…最低な姉だもの、…誰だってエマを好きになるわ…、」
「お前って秀才なわりには自己肯定感低いよな」
「っ、うるさい、離してっ、」
「やだね、離さない」
さすが早乙女 燐だと思った。
あなたはやっぱりかなり憎たらしい男だ。