俺の好きにさせてください、お嬢様。
そんな男を私の大切な妹の隣に立たせるわけにはいかない。
こんなにも性格の悪い男を扱えるのなんか…性格の悪い私くらいよ。
「さすがに俺だって黙ってられないんだよ。仕返しさせろ、だから次からは───」
ぐいっと隣シートから身を乗り出してくる。
サラッと揺れた絹糸のような金髪が私の茶髪と合わさった。
「───んんっ…!?」
左手は私の右手、右手は私の後頭部。
力強く引き寄せられて、それとは裏腹に唇には感じたこともない柔らかさ。
ふにっと、すぐに弾けてしまいそうになのに、燐は私の強がりと意地っ張りを溶かしてしまうように重ねてくる。
「んっ、…なに…っ、するのよ……っ」
「10回のビンタに1回はするから」
なにを言ってるの。
これは私のファーストキスだ。
ずっとずっと大切にとっておいたもの。
でも、この男で嬉しいって思ってしまった私が悔しい。
「あなたはエマが好きなんでしょう…っ」
「どーかな?…そうやって俺のことだけ考えてずっと泣いてればいいよ、アリサ」
「っ、最低…っ!!んんっ、やめ…っ、」
「やっぱ3回に1回ね」