俺の好きにさせてください、お嬢様。
2回もしてきた男の目は、エマを見つめていたものよりずっとずっと嬉しそうで優しかった。
どうしてそんな目をしているの…?
私をエマに重ねてるの…?
残念だけど私はエマのように強くて純粋で、かわいい女の子じゃないわ。
「まだ3回も叩いてないじゃない…!」
「だね、俺がしたかっただけ。だから抱きしめていい?」
「っ…、いやよ、」
「なんか可愛く映って仕方ないんだよ。お前のこと」
私の意見なんか最初から聞いてないし、キスしたことも詫びてすらいない。
でも、今まで女を無下に扱っていた早乙女 燐とはやっぱりどこか違って優しい。
「や、やめて……、私は、エマじゃないわ…」
「知ってる。泣き顔が可愛くて妹よりも意地っ張りで、実際はエマよりずっとずっと脆いお姉ちゃんだろ?」
「っ、…秀才な、柊財閥の長女だもの、」
「あー、もうそんなの興味ないね俺」
誰かに抱きしめられるというのはこんなにも温かいこと、初めて知った。
そこは私もエマと似ていて、お父さんには“柊家の優秀な娘”としか見られていなかったから。
こうして抱きしめられたことなんか1度もなくて。
だけどエマにとっては、たくさんの愛情で包んでくれる人は真冬くん。
それなら私は───…
「だからさ、アリサ。俺と一緒に四つ葉のクローバー探しに行かない?」
「……え…、今から…?」
「そう、今から。よし行こう」
私は、この人となら見つけられるのかもしれない……なんて。