俺の好きにさせてください、お嬢様。
「え、早瀬さん…?柊さん…なにかあったの…?」
「いえ、少し逆上せてしまっただけです。問題ありませんのでお気になさらず」
あれから甘い甘い耐えられないくらいの躾&お仕置きを受けたわたしは案の定、遅刻。
ベスト姿のハヤセに抱き上げられながら教室へ向かった。
そんな腕の中、ジャケットを被せられたわたしの意識は朦朧(もうろう)としているわけで。
「顔が真っ赤よ?熱でもあるんじゃないの?」
「ただの知恵熱ですから。少し熱すぎたようで」
「え…?今は秋よ?」
「はい。少々熱くなりすぎたのです」
伝わっていない会話に担任の女教師は首を傾けた。
そもそも「あつい」の漢字が違うと思う。
みんなは「暑い」だと思ってるんだろうけど、そうじゃないの先生…。
なにが熱くなりすぎたのか、そんなのは知らなくていい。
わたしだって思い返すだけで意識が今にも切れそうだ。
「ハヤセ今日からわたしに触るの禁止…っ」
クラスイメイトと専属執事たちをすり抜けるように、わたしの席へ向かうハヤセ。
ぎゅっと顔を埋めて小さく訴えた。
「…んなの無理に決まってんだろ」
別にクラスメイトに聞こえたっていい、そんな思いが見え見えの音量で答えやがったSランク執事。