俺の好きにさせてください、お嬢様。
「嫌じゃ。ワシは君のような色男では無かったわい」
「そこをなんとかお願いします」
「何事もここが大事なんじゃよ、ここ、」
トントンとおじいちゃんは右手で自分の心臓を叩いた。
その反動で「おおぅ」と、少し苦しくなったらしい。
そのままプルプル杖を付いて歩くおじいちゃんを見送って、わたしは部屋へ戻った。
「ハヤセ、悔しいの?」
「…当たり前です。俺は首席のエリートですから」
うわっ、自分で言っちゃったし…。
執事学校がどんなに厳しい場所かは想像もできないけど、こんな顔のハヤセは初めて見た。
「ハヤセ元気だしてっ!ハヤセが元気じゃないとわたしも元気でないっ」
「…じゃあ、慰めてください」
「えっ、慰める…?どうやって…?」
ハヤセはゆっくりソファーに座ると、ポンポンと自分の膝を叩く。
ここに乗ってください───と、言わなくても伝わるアイコンタクト。
「わっ、」
言われたとおり背中を向けて座ろうとすれば、それは違っていたらしい。
クルッと向かい合わせの体勢に簡単に変えられてしまった。