俺の好きにさせてください、お嬢様。
わたしが窓側、ハヤセが通路側。
他のクラスメイトもその形でシートに座っていた。
「エマお嬢様、小腹が空きませんか?実はとびきりのお菓子を用意しているんです」
「えっ、本当に!?」
「はい。ですのでこちらを向いてくれませんか?」
向くっ!そんなの余裕で向くよ!!
ちょっとお腹空いたなぁって、お菓子食べたいなぁって思ってたのわたし!
さすがはわたしの専属執事だ。
でもお菓子食べちゃったらもっとテンション上がっちゃう!!
「ハヤセっ!お菓子ってどんな───っ!」
クルッと振り向けば、ふわっと周りから隠すように近づいてきた顔。
そのままわたしの唇に柔らかい同じものが合わせられて、すぐに離れた。
「っ、はや……せ、」
びっくりしてパチパチと瞬きしていると、そのままわたしの黒髪を拾って耳にかけて。
可愛くアレンジしてくれた三つ編みを崩さぬようスムーズに寄ってくる。
「───エマ」
「っ…!!」
もうそれだけ。
ただ敬語じゃなく名前を呼ばれて、そっと頭を撫でてくれただけ。