俺の好きにさせてください、お嬢様。
「啊! 我刚刚看到一个女孩哭着叫你 "早濑"!
(あ!泣きながら“ハヤセ”って言ってた女の子ならさっき見たよ!)」
すぐに詳しいことを聞いて、エマお嬢様が走って行った方向を追いかけた。
やはり俺の読みどおりだった。
この先は台湾の中でも日本の街並みが揃うジャパンタウン。
そこなら日本語が話せる台湾人で溢れている。
きっとがむしゃらに日本語が通じる人間を探しに行ったのだろう、脳裏に泣いているエマお嬢様が思い浮かんで走った。
「你的兄弟太酷了! 你想去我的店吗?
(お兄さんカッコいいね!ウチのお店寄っていかない?)」
「你来自日本吗?(日本から来たの?)
アタシニホンゴ、ハナセルヨ?」
台湾の女性は比較的、美人が多いと有名らしい。
けれど俺の目には一切入らなかった。
「…ここか、」
ジャパンタウンに着いた頃、すでに18時を回っていた。
門限は21時、胸を撫で下ろしつつも俺は1つの店の前で躊躇った。
「……本当に…ここなのか…?」
目撃情報を追って最終的に辿り着いた場所は───オカマバー。
さすがに違うだろうと背中を向けようとしたが、ドアの中から「うわぁぁんハヤセ…っ」と微かに聞こえて。
……覚悟を決めろ俺。
そう自分に言い聞かせて、ドアをゆっくり開けた。
*