俺の好きにさせてください、お嬢様。
早乙女の言葉はまるで、その娘を救えるのは俺たちだけなんだよ───と言っているように聞こえた。
「…お前、わりといろいろ考えてんだな」
「はい?馬鹿にしてんだろそれ」
「あぁ、馬鹿にしてた。ただのコネで生きてきたボンボンの坊っちゃんだと思ってた」
「ふざけんな、俺だって実力はあるんだよ。本当にコネだけに頼ってるような男だったらアリサ連れて海外行くとか言えないだろ」
これは言えないが、見直した。
タイミングが少しでもズレていたら、本当にエマお嬢様をこいつに奪われていたかもしれないと思うくらいに。
だから内心ホッとしている俺を早乙女は分かっているのか、意地悪に笑った。
「国はもう決めてんのか」
「うん。イタリア」
「…やめろ。俺と被る」
「もう進めてるから無理。それにイタリアって最近すごい先進国だろ?新しいこと始めやすいかなって」
なんでイタリアなんだよ。
そんなの結局は変わらない毎日がくるだけだろ。
「ならさ、俺たちで会社作らない?」
「……俺は執事だ」
「あー、じゃあ新しい執事学校でも作ろうよ早瀬さん。イタリア首相の力でも借りてさ」
「ふざけんな、そのために俺を使おうとしてるだけか」