俺の好きにさせてください、お嬢様。
そんな俺からのツッコミを待っていたかのように、「違う違う」と首を横に振った早乙女。
「でもエマが卒業してイタリア行って、そのあとずっと執事ってわけではないだろ?かと言って他の女の執事するってのもヤバいじゃん。
ある意味あんたはエマを養うってことだからさ。となると、良い話だと思うけど?」
「……保留で頼む。だが、もし役職を作るのであれば俺は幹部にしろよ」
「ふっ、そのつもりだよ」
本当かどうかも分からない約束をしてしまった。
けれど早乙女財閥の御曹司と、俺はイタリアでも名のあるエリートSランク執事。
もし何かを一緒に作るとなると、かなり大きなものになるだろう。
「てか早瀬さん、こんなのんびりしてていの?俺エマの執事やったことあるから分かるけど、たぶんすごいことになってるよ」
「……あぁ、俺も危機を感じてる」
「あいつってサプライズ大好き人間だから。それで失敗するオチだろ、じゃあ頑張って」
ぬるくなってしまったコーヒーを喉に通して、俺はすぐに店を出た。
スマホに入っている早乙女のものだろうアドレスを「早乙女」と登録し、走る。