俺の好きにさせてください、お嬢様。
「一緒に作りましょうか、パンケーキ」
「いいの…?」
「俺も作りたいんです。きっと俺たちが作るのですから、とびきり美味しいものになりますよ」
「うんっ!!」
俺の腕の中、ぱあっと太陽のような笑顔が広がった。
100歳になっても、エマお嬢様がおばあちゃんになっても。
それでも俺はあなたの執事でいると交わした約束は。
その頃のエマお嬢様とは、捉え方の意味が違っていたのだ。
俺は───…最初からこういう意味で約束していた。
「かんせーいっ!!ハヤセっ!ハヤセ見て!!ふわふわっ!」
「完璧ですね。エマお嬢様、前に九条様から頂いたジャムを塗ってみませんか?」
「あっ!それいいねっ!!あんなに苦労して開けたんだからきっと美味しいはずっ」
御子柴さんに開けられたということが少し悔しいところもあるが、エマお嬢様と結婚するのは俺だ。
ワクワクと瞳を輝かせるエマお嬢様の前。
ラズベリー色をしたジャムをパンケーキにトッピングして、いざ実食。
「…………ハヤセ、」
「……日本とは味覚が違うのでしょうか」
「…なんで色は赤なのにしょっぱいの……?これがハワイなの…?」
「……どう、ですかね」
その味は、なんとも微妙だった。
期待していたからこそ残念でならない。
「ふふっ、あははっ!楽しいねハヤセっ」
「…あぁ」
それでも笑顔になれる。
それが、この子と手にしたい俺の未来だ。