僕は、空の上から君を見守る
ルーホーは荒野に立っていた。
荒野の向うからこちらに堂々と向かってくる存在。

それは
巨大な竜巻。
現代のF(フジタ)スケールで言うF5クラスの
超巨大竜巻。
その威力は
家屋は吹き飛び、木は根こそぎ引き抜かれ、
列車も巻き上げられる。

そんな竜巻を前に立ちすくむルーホー。
いざ目の前に目の当たりにするとあまりのスケールに足がすくむ。
「また竜巻かよ。ついてないな。」
ウォルスがルーホーの横にそっと立つ。
「ウォルス!来てくれたんだ!」
「まぁな。しかしあの竜巻、、、」
ウォルスもいつになく真剣な眼差しで
荒野の先をみつめる。
「このままだと街に突っ込むな。」
「、、、ああ。」
ルーホーも一緒に竜巻を見つめる。
「、、、」
「、、、」
しばらく沈黙する二人。
だが二人の想いは同じだった。
これは覚悟を決める時間。

「あ〜あ!くそっ!竜巻から逃げたのに結局竜巻の相手かよ!!」
ウォルスがいつも通りの軽い口調で話し出す。
ビューっ!!
そこに竜巻へ向かうように強い風が吹く。
「!!」
ルーホーではない!
その風が誰のものか
ルーホーはすぐに気付いた。
「アモストフィア!!」


「ルーホー!俺があの竜巻は何とかするから!」
アモストフィアはハントの瞳を覗き込みながら
風の流れを操作する。


きっとアモストフィアは空から僕の事を見てくれてたんだ。
それで異変に気づいて、、、でも。
「アモストフィア!!」
ルーホーは大空に向けて大声で叫ぶ。
「やめてくれ!!風を操作するのは!!」


その声がアモストフィアに届く。
まるで急ブレーキを、かけるかのように
風の操作を一時止めるアモストフィア。
「、、、何で、、、。」


風が止んだのを確認してルーホーは続ける。
「君がもし流れを変えたら!君まで罪人になってしまう。」
ルーホーが歩んだ罪人の道。それを友にも歩ませるわけにはいかなかった。
「それに、竜巻は自律型の風。風をぶつけた所で跳ね返させるだけだ!!」


「でも!、、、それじゃあ!、、、」
街に向かう竜巻はこのままではルーホー達もろとも
破壊していく。
アモストフィアは何か自分に出来る事は無いかと考える。


そんなアモストフィアの気持ちが伝わったのか、
制止させるようにルーホーは叫んだ。
「君が罪を犯したら、誰がブルーを!この街を守るんだい!?」
ハントの瞳から覗き込んで
風を操っているんだ。
アモストフィアは風職人の職に就いているに
違いない。
そして、それはおそらく僕が抜けた
ブルーの街の、、、。


「!!」
そうだ!ルーホーはブルーを守る為にここまでの事をしてきたんだ。
アモストフィアはその言葉の覚悟を感じ取る。


「ウォルス、、、。僕ずっと悪いと思ってたんだ、、、。」
ルーホーはウォルスにそっと語りかける。
「僕のせいで世界を滅茶苦茶にして、、、。
もちろん今でも悪いとは思ってる。」
「だけど救われたんだ。」
「ブルーやビスルが笑ってる姿を見たら。
僕のした事で笑えてる人もいるんだって。」

その優しい横顔は
まるで諭すかのようにウォルスとアモストフィアの心を打つ。

「だから!僕は、みんなには笑っていて欲しいんだ!」
ルーホーが拳を握る。
「分かってるぜ相棒!これからもブルーの笑顔を守ってやれよ!」
竜巻の風が感じられるほどに
周りに吹き出す中、ウォルスの言葉に
服をたなびかせながら竜巻を見つめたまま
ルーホーは答える。
「もちろんだ!」


ルーホーは迫りくる竜巻をギッ!
と睨みつけアモストフィアに届く程の大きな声で言う。
「大丈夫!竜巻は僕達がなんとかするから!」
ウォルスも八重歯を見せながらやんちゃな笑みで続く。
「今度は正面から相手をしてやるぜ!かかって来やがれ竜巻!!」

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