赤い雫のワルツ
私は何の迷いもなく、スパーンと扉を開けてズカズカと部屋に入り込む。
「ご主人様、その女性はもうお預けです」
「なっ!カレロア!?いつからここに……!」
私――カレロアのご主人、ヴィルレイム様から女性を引き剥がして、持ってきたワイングラスを差し出した。
飲めと無言の圧力を掛けていると、渋々受け取るしかないご主人様は、不満気に私を見つめる。
「いいですか、ご主人様。貴方様は最恐と言われる公爵家、グロウス家の血を引く【吸血鬼】。血に飢え、血を啜るのが吸血鬼です。なのにどうして、いつもご主人様は情が移るのですか。ヘタレになってるという自覚はございますか?」
「……メイドという立場なのに容赦ないな、カレロア」
「刃向かえるというのなら、どうぞ。お相手しますよ」
言い返せないのが分かっているご主人様は、口をへの字に曲げて、文句の一つも言うこともなく、渡したトマトジュースを口に含んだ。