赤い雫のワルツ
見た目は人間で言う、三十代後半前後。
きちっとした紳士服を身にまとって、このナートリアの領土を治める領主。
領民からは慕われ、街を歩けば女性達からのチヤホヤされる、色んな意味で紳士的な男性だ。
恐ろしいくらいに整った顔立ちで、注目しない人はいない。
――それが、表のご主人様の顔。
「二百年生きてきたが、吸血鬼相手に歯向かってきた人間は君だけだぞ」
裏ではこうして甘い言葉を囁いて、危ない橋を渡ってきた街の女性を捕まえては、その血を啜る吸血鬼。
歴代の領主達もこうして、領地を治めながら裏では人間の生き血を啜って生き長らえてきたんだとか、どうだとか。