そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

 その芳香が、幼い折にも花々里(かがり)から香っていた(カウ)マークの石けんの赤箱のにおいだということは、すぐに分かった。


 俺はキミから立ち昇るその香りが大好きで、まだ小さかった花々里を抱きしめるたびに胸いっぱいにキミのにおいを吸い込んでいた記憶がある。


 何て甘いにおいのする、美味しそうな女の子なんだろうって。



 もちろん、まだ(とお)にも満たない女の子を相手に、性的な意味合いで「美味しそう」と思ったわけではないよ?


 その頃は俺自身も、「男」と呼ぶには未熟な少年だったし、純粋に花々里のことを「甘い香りがして美味しそうな子」だと思っていただけだ。
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