そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 お菓子みたいにふんわりと甘いにおいのする、この小さな女の子を、もっともっと甘やかして美味しいものを沢山食べさせたら、極上のスイーツみたいな香りになるんじゃないか。


 バカで浅はかな少年だった俺は、幼な心にそう期待したのだけれど。


 俺を見るたびに「ね、きょうはどんなおかし、くれるの!?」と嬉しそうに満面の笑みを浮かべる食いしん坊な花々里(かがり)を見ているうちに、段々罪悪感が募ったんだ。


 俺は花々里を相手に、あくなき好奇心と、家で満たされない寂しい想いを埋めるための「穴埋め」をしているつもりでいたのだから。



 俺は、自分の高校受験と、家庭内での揉め事を理由に、中3になったと同時、キミの元へ通うのをパタリとやめた――。


***


 花々里(かがり)は、再会した折、幼い頃一時的におやつを少しくれただけの、――それこそ成長途中の少年だった俺の顔なんてすっかり忘れていたけれど。




 俺のほうはその罪悪感もあったのかな。キミのことを忘れたことはなかったんだ。
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