そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！　謹んでお断り申し上げます！〜
　そうしてもう１人。

　花々里(かがり)のお母さん――村陰(むらかげ)さんも、葬儀から程なくして、幼い娘に毎日のように菓子を持ってきていた勤め先の跡取息子(おれ)のことを、忘れることが出来なかったらしい。


　村陰さんが、うちを辞めてからも時折花々里の近況をわざわざ俺宛に手紙を送って教えてくれていたのは、多分そのためだったんだと思う。


　きっと俺が、受験や家の事情なんかでやむを得ず娘のもとを訪れることが出来なくなってしまったんだと解釈してくれたんだろうな。


　実際はそんな綺麗な理由じゃなかったんだけど、俺は一時期餌付けした、俺によく懐いた可愛い花々里(ペット)のその後のことを知りたくて、そんな村陰さんのご厚意に甘えてその連絡を、時折返信する形で催促し(受け取り)続けてしまった。


　結局、村陰さんが倒れた折、それが俺と花々里をもう１度引き合わせる「糸」になるとも知らずに――。
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