そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

 正直な話、食べる姿がめちゃくちゃ可愛い実験動物(モルモット)ぐらいに思っていた花々里(かがり)が、あんなに美人(俺好み)に成長していたのは誤算だった。


 あの日。

 倒れて入院中だと言う村陰(むらかげ)さんからの手紙に誘われて、俺は十数年ぶりに花々里の母親(かのじょ)に会いに行った。

 入院中の村陰さんに、「情けないけれど親戚も疎遠で、ひとりぼっちになってしまった娘のことを頼める人が、あなたしか思い浮かばなかった」と言われて。
 ついでのように年頃の娘へと成長した花々里(かがり)の写真を見せられた俺は、その愛らしさに釘付けになってしまったんだ。

 確かに幼い頃からくりくりとした目の、可愛いらしい《《おチビさん》》ではあったけれど。
 写真の中の花々里は、そんな面影(おもかげ)は残しつつも、まるでイモムシが蝶になったみたいに美しく変化(へんげ)していたから。

 あれを世間では〝一目惚れ〟、と言うんだろうか。
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