そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！　謹んでお断り申し上げます！〜
＊＊＊

「キミはどうしてごはんを食べないの？」


　ひもじそうにアパート前の駐車場(空き地)に座っている女の子を見付けてそう声をかけると、「ごはん、ひとりでたべるのイヤなの」って答えが返ってきて。


　どういうことかと思ったら、家にはちゃんと夕飯は用意されているけれど、お母さんと一緒でなければ食べたくないと言う。


　当時、花々里(かがり)の母親は帰りが遅いことが多くて。

　幼い花々里はそんな母親の帰りをひとりで懸命に待っていたんだ。


　そういう日には家に来ているはずのシッターに馴染むこともなく、ひとりぼっちでアパート外に出て母親を待つのが花々里の日課らしかった。


　花々里(かがり)のお母さんが雇ったシッターとやらも、食事を作るという役割はちゃんと果たしていた。


　しかしながら、いくら勧めても頑(かたく)なに１人ではご飯を食べようとしない花々里に、無理矢理食わせなくてもいいという結論に達したらしく。


　最初のうちこそ駐車場に座り込む花々里に付き添っていたみたいだが、そこから動くことのない花々里にやがてそれもしなくなったようで。


　どの道、母親が帰れば食べるわけだし、チョロチョロするわけではないから死にはしないと考えたんだろうか。


　そうしてそんな風に自分を見限った者に、幼い花々里が懐くはずもなく――。
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