そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 でも大丈夫。

 私はここが何のお店か()()分かってる。


 頼綱(よりつな)はグルメなところがあるし、そんな彼お勧めのお店だもの。


 暖簾(のれん)が不出来なだけで、見限ったりしないわっ!



 さっき頼綱は、私に天ぷらを食べさせてくれると約束した。
 だからきっと、ここは日本料理のお店か、小料理屋さん。
 もしくは天ぷら専門店に違いないの!


「天ぷら?」

 暖簾を見つめながら、一応確認のためにそう問いかけたら「〝てんぷら〟じゃなくて〝あまみや〟って読むんだよ」とか。


 いや、そうじゃなくてっ!ってむきになったら、クスクス笑われた。
 

 もぉ! わざとね!?


 こんな素敵なお店の前で喧嘩なんてしたくないのに。


「入れば分かるさ」

 頼綱は当然のように私の肩を抱くと、何ら逡巡(しゅんじゅん)することなくその暖簾をくぐって引き戸を開けた。
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