そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「――キ……ッ」

 キャーッ!って叫ぼうとしたら「バカッ! よく見ろ! 俺だよ」って口を塞がれて。

 新手(あらて)のオレオレ詐欺(さぎ)は電話の垣根も飛び越えて、電柱の陰から襲ってくるようになったんだ!って泣きそうになったら、目の前にヌッと見慣れた容器(タッパー)を突き出された。

 ――あ。

「なんだ寛道(ひろみち)じゃないっ」

 口に当てられた手を外して言って、確認がてら後ろを振り返る。

 それはよく柳川(やながわ)家からお裾分けをもらうとき、寛道んトコのおばちゃんが料理を入れてくれる、半透明の器に青いフタの付いたプラスチック製の入れ物で。

 それを見た瞬間、すぐに私を捕まえてるのが寛道だって分かった。


「お前なぁ、タッパーより先に()()()で気づけよ!」

 ぶつくさ文句を言いながら……それでもどこか申し訳なさそうに

「昨日お前、俺が差し入れ食っちまったの怒ってたから……代わりな?」

 とか。
 寛道、あなた、案外いいところあるじゃないっ!

 中身はかぼちゃの煮付けらしい。
 やったー! おばちゃんの煮物大好き!


 タッパーを手にニマニマしていたら、

「ついでだし学校、一緒に行ってやるよ。荷物寄越せ」

 当然のようにタッパーと引き換えに私の重ぉーい教材満載のキャンパストートを持ってくれるの。


 何この至れり尽くせり♥
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