そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 あーん、美味しいっ!
 美味し過ぎて、やめなきゃって思うのに次々に口に入れちゃうのを止められない。
 入れるのやめなきゃ話せないのにっ!

 モグモグ……ゴクン……。モグモグ……ゴクン……。
 それを無言でしばらく続けて……お重の中が、最初の量の10分の1くらいになったところで私はお吸い物をひと口飲んで、やっと手を止めた。

 そうしてからようやく、私の前で澄ました顔でうな重を口に運んでいる御神本(みきもと)さんを睨みつける。

 ピンと伸びた背筋や、箸を口元に運ぶ角度など、何を取っても所作がすごく綺麗で、お育ちの良さを感じてしまう。何だか悔しいな。

 そんな人を前に私はガサガサと騒ぎ立てる。

「さっきのっ!」
 言ったらチラリと視線を投げかけられて、
「さっきの? はて……何の話だろうね?」
 分かってるくせに絶対(とぼ)けてる。

「9つしか離れてないくせにボケるのは早いんじゃないですか?」

 そこで、御神本(みきもと)さんの手元のお重を見て、我慢できずにもうひと口だけ、と今にもなくなりそうな自分のうなぎをパクリ。

 んーっ! ふかふかで本当美味しいっ。

 じゃなくて――!
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