そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！ 謹んでお断り申し上げます！〜

「足、手当てしとかねぇと車から降りたあと、歩くのしんどいだろ？」

　だから必要な処置だったんだぞ？と噛んで含めるように言い聞かされて、私は涙をこらえてコクンとうなずいた。

　でも何となく痛いことをされた、という気持ちだけは抜け切らなくて、恨みがましく目に力が入ってしまって。

「分かったんならそんなに睨むなよ。何か悪いことしちまった気分になんだろーが」

　言葉とは裏腹、さして気にしていなさそうにククッと笑うと、鳥飼(とりかい)さんがアームレストに置きっぱなしになっていたゴミをサッとさらって持ち去ってしまう。

「あっ」

　ご馳走になった上にゴミまでお世話になるとか申し訳ないっ。
　そう思って慌てて手を伸ばしたら、「他にも捨てるもんあっから」とかわされてしまった。

「――さて、と。そんじゃそろそろ行きますか」

　ゴミを運転席そばのゴミ箱に入れると、鳥飼さんがエンジンをかけながらミラー越しに私を見つめてきて。

　私は彼の視線にそっと目を伏せると、「お願いします」と深々と頭を下げた。


　何なの。この、言いようのない敗北感！