そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

「そうだ花々里(かがり)。今日産科の方に顔を出した時にたまたまもらったんだがね、キミにと思って取っておいたんだよ」

 職員駐車場の片隅に停められた黒のレクサスに乗り込むなり、頼綱(よりつな)がそう言って小さな紙袋を差し出してきた。

「良い子で待っていられたご褒美だよ」

 それは朝も見た例のシュークリームが入った包みで。
 条件反射かな。
 鳥飼(とりかい)さんの車の中で食べたカスタードクリームの濃厚な卵の風味が口の中によみがえる。

「シュークリーム!」

 興奮の余り、まだ袋の中に入ったまま。中身なんて見えていないのに思わずそう口走ってしまってから、「しまった!」と思って口を押さえた。

 でも後の祭り。


「まだ中身、見えていないよね? ねぇ花々里(かがり)。それなのに、キミは何故これがシュークリームだと分かったのかな?」

 ガチャッ、と音がしたのは頼綱がドアロックをかけた音でしょうか?
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