そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 ――私のこと(めと)るとか何とか言ったから!

 そう続けようとして、でもそう言ったら嫌だ嫌だと言いながらも、そうなることを受け入れていたように思えちゃう?と思いいたって。

「うっ、有無を言わせず押し込んだからっ」

 心に嘘を含んだ理由付けは、間近に迫る頼綱(よりつな)の顔をじっと見上げたまま言うには重すぎた。

 無意識にふいっと目を逸らしたら、全てお見通しだよ?とばかりにクスッと笑われてしまう。


「まぁ花々里(かがり)がそう言うのなら、そう言うことにしておこうか。でも――」

 そこで私の耳元に唇を寄せると、

「今日は俺、花々里(かがり)のこと、助手席(そこ)に押し込んでないからね?」

 って低く甘く(ささや)かれる。

 確かにそれはその通りで、反論の余地なんてなくて――。

「なっ、……」
 
 首をすくめて耳を押さえながら「慣れだもん!」って言ったら、「光栄です、姫」って頬にチュッと口付けられた。

「ひゃわっ!」

 驚きのあまり変な声が出て、頼綱にクスクス笑われてしまう。

 笑わないでよぅ!
 だってだってだって!
 いきなりほっぺにキスしてくるとか!

 どう考えても反則だもん、頼綱のバカぁー!
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