そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
(より)(つな)……?」

 その様子にこちらまで気持ちが張り詰めてくるようで。

 恐る恐る彼の名前を呼んで、頼綱を不安いっぱいになりながら見上げたら、彼はそんな私をじっと見下ろしてきて。

 いつもより更に低い声音で(ささや)くように問い掛けてきた。


「その、――俺のこと、()()()()好き…………になれそうか?」

 明らかに、「好き」と「なれそうか?」の間に不自然な間があった。

 いつも自信満々な、どこか傲慢(ごうまん)にすら感じさせられる大人の男性なイメージの頼綱がっ。
 私みたいな小娘相手に、「好きか?」と聞けずに不安そうに言葉を濁してしまったことに、どうしようもなくキュン、とさせられてしまう。


「……ご、ごめんなさいっ」

 プレッシャーに耐えきれなくて、思わず顔を横向けて小さくつぶやいたら、頼綱が一瞬私を抱く腕に痛いくらいに力を込めたのが分かった。


「……そうか。ここまできても脈なしか……」

 直後、ぽつんと頼綱がそうこぼしたのを聞いて、私は慌ててフルフルと首を横に振る。

「ち、違う!」

 私、貴方にそんな悲しそうな顔をさせたかったわけじゃない!

「頼綱、最後まで聞いて!」

 気がつくと、私はぐるぐる巻きにされたまま必死に身体をじたばたさせていた。
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