そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「……おはよう、花々里(かがり)。昨夜はよく眠れたかな?」

 問いかけてくる彼自身、寝不足なのがありありとうかがえる、どこか疲れた表情で。


「じ、実はあんまり。――でも……頼綱(よりつな)も、だよね?」

 本当は心配すべきところのはずなのに、何だか自分だけが眠れなかったんじゃないんだと思ったら、ちょっぴり気持ちが高揚して。

「嬉しそうだね」

 頼綱に見透かされてしまった。


「だ、だって……私だけ気にしてるみたいなの、悔しかったんだもんっ。頼綱も眠れなかったんなら、おそ……おあいこでしょう?」

 〝おそろい〟と言おうとして、ひとり浮き足立っていると思われるのが恥ずかしくて〝おあいこ〟と言い直す。

 なのに「そうだね、おそろいだね」って口の端に微笑を浮かべて幸せそうにサラリと言っちゃうの、ずるいよ。
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