そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「我慢させてしまったらキミは話が頭に入らないだろうし、食べながら聞いてくれたんで構わないからね?」

 待ての下手な犬みたいにぷるぷると身体を震わせて何度も生唾を飲み込む私に、頼綱(よりつな)がふっと表情を和らげてそう言ってくれて。

「八千代さんも。もし宜しければご自分のお茶とケーキを切り分けてきませんか?」
 とか言うの。

 八千代さんは頼綱(よりつな)の言葉に小さく笑うと、「ではお言葉に甘えさせていただきましょう」と一旦席を外した。


花々里(かがり)、食べていいよ?」

 八千代さんを見送って、お皿の上のフォークをソワソワと見つめていたら、頼綱に再度促されて。

 私はグッとこぶしを握って「みんなが揃ってからにする」と虚勢を張ってみせた。

 さっき美味しい夕飯――お昼前に台所で八千代さんに告げられたままの和食――を食べたばかり。
 ……ましてや今日は1日中ゴロゴロして過ごしたと言うのに甘い物は別腹だと認識してしまうお腹の虫が、我ながら憎らしい。

「頼綱、もしかして私を子豚ちゃんにして食べるつもりじゃない?」

 思わず彼を恨みがましく見つめながら問いかけたら、「言ったよね? 花々里(かがり)は痩せすぎだし、もう少しまるみがあってもいいと思うよ」って。
 なに、アレ、本気だったの?
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