そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 何だか、私が今ここで「うん」って言ったら、即購入になりそうだなって思って……。
 肯定(こうてい)していいものか凄く迷ったけれど、どうせ躊躇(ためら)ったところで、他を勧められるだけなんだろうなってすぐに思い直して、素直にうなずくことにした。

 頼綱はそんな私に満足そうに微笑むと、間髪入れずに今度は結婚指輪を提案してくるの。


「その婚約指輪に重ね付けにする結婚指輪は、水鏡をイメージしたというこの流線型のリングが合うと思うんだ」

 そう頼綱が言って、ジュエリートレイの中から鏡面みたいにピカピカした柔らかいラインのひとつを指さした。

「ハードプラチナ製だからしっかりしてるしシンプルでも綺麗だろう? 同じシリーズに、小さな石がいくつか散りばめられたデザインもあるんだけど……花々里(かがり)はきっと石なしを選ぶよね?」

 聞かれて、よくお分かりですね、頼綱さん!と思う。


 水鏡リングには男性用もあって、頼綱とお揃いになるのはそちらの指輪らしい。


 雲間からのぞく、満月を移す水鏡。
 なんだかロマンチックで素敵だな、と思った私だったけれど。


 頼綱のリングも、自分が付けるものに左右されるとなるとどうしても言わずにはいられない――。
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