そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！ 謹んでお断り申し上げます！〜

　そんな私の顔を見詰めた頼綱(よりつな)が、

「花々里(かがり)、もしかして……ヤキモチを妬いてくれてるの……？」

　驚いた顔をして恐る恐る問いかけてきた。


「……やき、もち？」

　それが網の上で焼いたお餅のことじゃないのは、いくら食いしん坊の私でも分かる。

　うそ……。
　これが、俗に言う嫉妬(ヤキモチ)というものなの？


「……頼綱。これ、すごくヤダ。……どうやったら私の中から消せる……の？」

　ギュッと頼綱の服をつかんだままじっと彼を見上げて顔をゆがめたら、頼綱が一瞬瞳を見開いて……そのまま私を強く抱きしめた。

「ひゃっ」

　ち、違っ。
　人前でこんな……っ。
　そんなのをして欲しいんじゃなくて私、この気持ちの追い出し方を……。

　頼綱の腕の中、ブワッと身体を熱くしてソワソワと身じろいで、気が付いた。

　あれ？　私の心の中、恥ずかしさだけになって、る……？

　さっきまであんなに感じていたモヤモヤが霧散して、今はただただ照れ臭いだけ。

「嫉妬心を失くすにはね、花々里(かがり)。相手を独占するしかないんだよ？」

　私を腕の中に閉じ込めたまま、頼綱が耳元でそうささやいて。
　私はその声と、嗅ぎ慣れたはずの頼綱の香りにクラクラしてしまう。