そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
頼綱(よりつな)……?」

 ギュッと頼綱の指先を握って彼の前に回り込むと、うつむけられたままの彼の顔を、下から覗き込んだ。


「――にゃふっ!?」

 ちょ、ちょっと待って!?
 嘘でしょ、嘘でしょ!?

 私、いま、驚きのあまり変な声が出てしまったじゃないっ!


 頼綱が真っ赤になって目端を潤ませていたとか……きっと気のせい、だよ、ね?

 恐る恐るもう1度頼綱の表情を(うかが)い見たら、気のせいなんかじゃなくってドキッと心臓が跳ねる。

 私は頼綱の表情に釣られたように、自分の頬がぶわっと熱くなるのを感じた。


「……何をバカなことを。()花々里(かがり)が魅力ないわけがないだろう?」

 ――実際ありすぎて困ってるんだ。


  ボソリと吐き捨てるように付け加えられた言葉に、私はますます照れてしまう。


 そう。

「なっ、なっ、なっ」

 ――何を言い出すの!?

 が言えなくて、「な」ばかり連呼してしまう程度には。
 私、恥ずかしさに混乱していますっ!



「あのね、花々里(かがり)。キミは今からすごく大変な時期に入る。俺のせいで変に疲れさせてはいけないと思ってるんだが、察してはくれないか?」

 言われて、頼綱はもしかして私のために〝我慢〟してくれているの?と思って。

「頼綱?」

 恐る恐る彼の名を呼んだら、頼綱がほぅっと溜め息を落とした。

「俺なりの願掛けみたいなもんだよ。キミが無事試験に受かるまで、俺は花々里(かがり)に手を出したりしない。正直結構しんどいから……一発で合格しておくれね?」

 恨めしそうに釘を刺されて、私は小さく息をのんだ。
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