そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 その期待に満ちた目に、私はこれ以上なんの()()がしてあるのぉ〜!?とドキドキが止まらない。

 指輪をグルグル回して頼綱(よりつな)の言う〝もうひとつ〟を探して――。


「……ん?」

 何これ。
 「Bon appetite! Kagari」の文字の後にちょっぴり距離を空けてハートがふたつ、蝶の羽根みたいに並んでいるのに気が付いた私は「ハート?」とつぶやいた。

「気がついたかね? それを(そっち)のリングと重ねてご覧?」

 視線で(うなが)されて、頼綱のリングを手に取って内側を見たら、彼のリングにも〝K to Y〟と今日の日付の刻印とともに、同じようにハートがふたつ並んでいて。

 それを私のと合わせたら。

「四つ葉の……クローバー?」

 今も私の耳に揺れるクローバーデザインのイヤリングを思い出して、私はこんなところにもクローバー?ってびっくりした。

「重ねたら現れるデザインっていうのが、ペアって感じがして良いだろう?」

 リングを手にした私の手ごと、頼綱の大きな手がそっと包み込んできて、その温かさにトクンッと心臓が跳ねた。

「頼綱……」

 嬉しさが込み上げるあまり何て言っていいのか分からなくて、彼の名をポツンと口の端に乗せた私の耳に、頼綱が唇を寄せてささやいてくる。
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